なぜ、今、日本でDXが議論されるのか 〜 注52

公開: 2021年5月3日

更新: 2021年5月31日

注52. ベンチャー企業経営指導員

1990年代の終り頃、カリフォルニア州サンノゼ市にあったベンチャー支援センターでは、起業を目指す若者や、起業したばかりのインターネット系、IT系ベンチャー経営者を支援する人材として、ベンチャー経営指導員を派遣する業務を行っていた。この支援センターは、サンノゼ市の財政支援で運営されていた。

当時のサンノゼ市の市長は、元企業経営者で、弁護士の資格を持った女性であった。サンノゼ市は、米海軍の基地を中心として発展し、1960年代からは、IBMやアップルなどのコンピュータ系大企業の誘致で成功した。しかし、1980年代後半から、米国経済の低迷によって、経済も大きく後退していた。その都市経済の立て直しを約束して立候補し、立て直しに着手したのが、この市長であった。

彼女は、サンノゼ市が、シリコンバレーの中心に位置しており、スタンフォード大学や、カリフォルニア大学バークレー校などの有名大学に近い点に着目した。当初、これらの大学の卒業生の多くが、卒業後にテキサスなどの他の州に移動し、専門的な職業に従事していたことに注目した。彼女は、優秀な学生達が、シリコンバレーに残り、ベンチャー企業を立ち上げることを推進しようと考えたのであった。その支援策の一つとして、ベンチャー支援センターを設置した。

ベンチャー経営指導員の多くは、サンノゼ市近辺にあるコンピュータ系企業に長年勤務していた人々で、ほとんどが50歳以上であった。アップルやIBMの経験者が多く、実務の経験も長い人々が多かった。サンノゼ市は、ベンチャー企業の支援だけでなく、地元の人的資源の活用も狙っていたのであった。

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